第10回「いじめ・自殺防止作文・ポスター・標語・ゆるキャラ・楽曲」コンテスト


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優秀賞受賞作品
「人間関係で悩むあなたへ」
ジエン 


「どうでもいい。」
大学生になって仲良くなったと感じた友達に、小さい頃から人付き合いが苦手なのと話した途端言われた言葉である。誤解を招かないよう具体的に言うと、

「人のことはどうでもいいの。」

と言っていた。彼女のいいわく、大勢といる時、一人ひとりに気を遣うのは難しいから大切な人に一番気を遣うらしい。それを聞き、これまでその場にいる全員に頑張っていた私を思い出した。しかし振り返って考えてみれば、相手にとって私は頑張っていない状態だったのかもしれない。皆に平等に、嫌われないようにしているつもりなのに、彼らからすれば何もしてもらっていないことに近い。

 皆と同じ扱いをされるより、むしろ普段は寡黙な人なのに私とはよく話してくれるとか、この子とは好きな趣味に関する話で盛り上がるという風に思われる方が余程よいかもしれない。そう考えると私の手で追えない数の人に機嫌を取り振り回されるより、楽しい時間を共にしたいと考える人と時間を過ごした方が楽だと感じる。どうでもよいと真剣に向き合う瞬間を使い分ける人であれば人付き合いが上手だっただろう。

 そうはいっても、朝ご飯としてパンケーキを食べたや上野でパンダを見てきたといったこういうどうでもいい話を続けていくことには興味がない。もちろん大学生となり、こういった話は人との関係を築く中で大事だと気づいたのでパンケーキのシロップの話につなげたり、パンダの赤ちゃんの話をしたりするなどその場を楽しませるように心がけている。

 ただ話題の発展が難しい時に無理やり人に合わせて頷くより興味のある話を持ち出して楽しく話すことができる内容を述べていく方が向いているように感じる。そういう風に自分自身に素直になって行動する方がうまくいった気もする。結局言葉は選んでいる私の世界観を表してくれるから、受け取る相手もそれを読み取りやすいので心地よく接するようになったのではないか。そういう人とは反対に憎みを感じる人は、私の人生を考慮するとどうでもいい人に近い。そういった人に悩まされて大切な時間を無駄にするより、彼らに素直に接する私のことを信じて応援してくれる人と気楽に人生を送りたい。

 生きていれば苦しくなったり、思い通りにいかなかったりすることもあるが、そういった信じてくれる人が一人でも近くにいることは悲しみと不安を乗り越えさせてくれる。その人は必ずしも今の周りの人である必要はない。親であってもよく、先輩であっても、自分自身より一回り歳が多い大人でもよい。歳下になる可能性もある。私のことを理解してくれる人はその存在だけで辛い状況を克服できる力になってくれる。そういった人に出会うためには、まず素直に私という人を見せる必要がある。

 何に興味を持っていて、何が好きで、どういう時に楽しさを感じるのかといった私の素をそのまま認めてくれる人を探すために何度もそうではない人を見つけ出してきた。パズルを完成させる際、何度も違うピースを当てたりするように、合わせていく過程の中できっと自分自身がどういうピースなのか気づき、どういう組み合わせができるのか自覚できるようになる。一生涯をかけて人間関係を結びながら私という人間について学ぶ中できっとそのピースの素敵さに気づくことができる。今後の人生において、それをわかってくれる素晴らしい人に出会うことも数多く経験するだろう。そこで初めてどうでもいいことがどうもいいことになっていくと考える。

 まだそういう大事な人がおらず、周りの人から私はどうでもいい人だと思われていると考える人がいれば、一緒に考えてもらいたい。本当にこの世にどうでもいい人はいるのだろうか。人は皆彼らなりに日々一生懸命に生きている。あなたもこの文章を読むまで色々な困難を乗り越えてきたに違いない。

 人それぞれ歩んできた過去と描く未来は異なるかもしれないが、皆にこの瞬間は平等に与えられている。過去の出来事に捉われることで現在から目を背けてしまい、理想と現実の乖離に挫折したり絶望したりする時、人は逃げたい気持ちになる。命の大事さを忘れてしまう悲しいことも起きる。ただ考えてみれば苦しいと感じるその原因は今この瞬間にあるものではない。悲観的になり、目の前の大切な瞬間を楽しめなくなることは輝くあなたの人生において非常に勿体無いことだ。

 あなたを悩ませる過去は二度と戻ることができないもので、不安にさせる未来はその瞬間になってみないとわからない。儚い存在である人間に唯一与えられているものは今この瞬間のみである。過去は戻らない未来はわからない。誰でもわかる事実だが、命のありがたさが見えない瞬間においてこの事実は真に難しいもののように感じられる。あなたがそれをどうでもいい人間関係で悩むことによって忘れないよう、心から願っている。

 駅のホームで電車を待っていると人身事故で電車が遅れると流れてくる冷たい社会になってきたが、大事な命が一つこの世からいなくなったことに対して温かい涙を流す人はすぐそこにいる。広大な宇宙に比べたら小さな存在なのかもしれないけれども、私たちは他と変えられない重大な存在である。私は一人ひとりの存在が照らすこの素敵な世界でもう少し学んでみたいという心持ちで日々生きている。辛い記憶も楽しい記憶も、今この瞬間の私を支えている。だから朝起きたら、今日も無事この世に生まれることができたと感謝しながら生きている。

 誰かのためにではなく、素直にまず私という人間のために生きていこう。今は辛いことも、大変なものも十年経てば笑って話すことができる思い出になる。未来が明るく楽しいものになっていけるよう、全ての瞬間を大事に、生きよう。一緒に。